トークイベント型の勉強会「関西ライターズリビングルーム」第三十一夜。
場所は北浜「フレイムハウス」。
テーマは
「恐怖」の文章表現 「恐い文章」を、どう書くか。
ゲストは、実話怪談の書き手として頭角をあらわす深津さくらさん。

ベテランの登壇が続いた関西ライターズリビングルームですが、2019年のトリは二十代の新星に飾っていただきました。
クリスマスの夜に、たくさんのご来場をいただき、まことにありがとうございます。
2019年の関西のライティングシーンを振り返ると、深津さくらさんほど芽を出した二十代の書き手は、ほかにいないでしょう。
この一年で「京都怪談 神隠し」「現代怪談 地獄めぐり 無間」と立て続けに実話怪談の共著を上梓し、さらには単独DVDまでリリースしたのですから。
そして世に出たきっかけが、実話怪談のイベントで、お客さんが怪談を語るコーナーで挙手したことだというから、デビューの仕方も異例です。
「実話怪談」は取材に基づくもの。
文芸としての情趣ある表現と、記者としてのリサーチ力や客観的なライティング技術を必要とします。
そのふたつを兼ね備えた大型新人の登場に、僕はひじょうに驚きました。

今回は怪談の実演二席と、ご本人も初めてという「その怪談はどのような取材のもとにテキスト化されたか」のメイキングを公開。

情報提供者にインタビューする。
できる限り、話に登場した場所へ実際におもむき、可能ならば撮影もする。
(この日は、他の怪談界ではまず見られない現場写真も多数公開してくださいました)。
提供された情報と自分が現地で感じた心象をあわせ、「どのような解釈ができるか」を考える。
これって怪談に限らず、どんなジャンルのライターでも守るべき手順ですよね。
それを、盛らず、飾らず、誇張せずに、語ったりテキスト化したりする。
そのため、話が必ずしもきれいに起承転結になっているわけではない。
唐突に終わってしまう場合もある。
だからこそ、よりいっそう真実味を帯びるのです。

深津さんはライティングの際は「自分をできるだけ出さないように心がける」と言います。
怪談でありながら、あえて「実際に訊いた以上に恐くするようにはしない」のです。
深津さんの話を聴いて感じたのは、
●才能がある人は、必ず誰かが見つける。
●そのためには、自らの勇気ある挙手が必要。
●現場へ足を運ぶことの大切さ。
●記者として裏方でいようとする姿勢の方が、実は書き手の個性が出る。
ということ。
深津さんは幼い頃から児童文学作家の故・松谷みよ子さんの本が好きで、よく読んでいたといいいます。
松谷みよ子さんは「ちいさいモモちゃん」など愛らしい童話の数々で知られる方ですが、もうひとつ、民話(怪談)の研究家という側面もあり、各地で調査収集した奇怪な逸話をたくさん書き残しています。
深津さんが現在やっている奇異なエピソードの情報収集とテキスト化は、エンタメというよりも、小泉八雲、柳田國男、松谷みよ子の流れを汲む民俗学なのでしょうね。
改めて、関西にすごい二十代が現れたなと、戦慄しました。

「関西ライターズリビングルーム」は、2020年も変わらず続きます。
毎月第四水曜日に開催しますので、よろしくお願いいたします。
ライター(Web&Paper)/放送作家 吉村智樹メールフォーム
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